|
<CS成倫勉強会講義録(要旨)> 日 時:平成14年10月8日 午後2時〜4時 <テーマ> ヴァーチャル児童ポルノ規制は合憲か〜 「アシュクロフト対表現の自由連盟事件」米最高裁判決〜 講 師:NHK放送文化研究所 海部一男氏 はじめに 今日は、今年の5月にアメリカの連邦最高裁判所であった「アシュクロフト対表現の自由連盟事件」という 訴訟事件に対する判決(Ashcroft v. Free Speech Coalition, 30 Med.L.Rptr. 1673)を題材にしながら、 アメリカにおける児童ポルノ規制についてお話し申し上げます。また、後段では、日本の児童ポルノ規制の現 状についても触れたいと思います。 この訴訟事件は、ヴァーチャルな、すなわち、実際に未成年者を使って制作されたものではないCGなどによ る児童ポルノをも禁止の対象とした「1996年児童ポルノ禁止法(Child Pornography Prevention Act of 1996)」 (CPPA)が、表現の自由を保障した憲法に違反していないかどうかが争われたもので、ここで、アシュクロ フトというのはアメリカの司法長官、「表現の自由連盟」というのは、カリフォルニア州のチャツワースとい うところに本部のある、ポルノビデオのプロダクションの業界団体です。 表現の自由は、言うまでもなく、私どもメディアに携わるすべてにとって仕事の拠り所となるものですが、 アメリカにおいては、それは、合衆国憲法修正第1条という形で保障されています。 アメリカの憲法は、1787年に制定され翌年施行されましたが、その時には国民の権利に関する条文はなく、 4年後に、修正第1条から第10条までが付け加えられました。これは「権利章典(Bill of Rights)」とも 呼ばれています。 表現の自由はその第1条で保障されており、表現の自由がアメリカにおいていかに重要な権利に思われている かが分かります。 ここでは、「議会は、表現の自由及び報道の自由を制約するような法律を定めてはならない」 "Congress shall make no law・・・abridging the freedom of speech, or of the press."と定められています。 ここで、"freedom of the press"というのは、直訳すると「出版の自由」ですが、これは「報道の自由」と訳 してもいいのではないかと思っています。 日本国憲法では、第21条で、 @集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障る。 A検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。 と定められています。 表現の自由は、基本的人権の中でも特に重要な権利であるとされ、アメリカでは「表現の自由の優越的地位」 という考え方が支配的です。 表現の自由は、他の基本的人権に比しても特に重要だ、という考え方です。 これに対しては批判もありますが、アメリカでのこうした考え方は、日本にも輸入されていて、日本の最高裁 でもそのような考え方を少なくとも表面上は取り入れている、と受け止められています。 しかし、その表現の自由も勿論無制約ではない。憲法による保障の対象として保護されない幾つかの領域があり ます。 今日のテーマに即して言うと、ひとつは猥褻な表現、もうひとつが児童ポルノです。これらの表現は、カテゴリー として、憲法による表現の自由の保障の対象外とされています。 |
|
T 訴訟事件とその背景 1 猥褻とは何か 「猥褻」という言葉が日常会話においてはどのような意味を持っているか広辞苑で調べてみると、「男女の性に 関する事柄を健全な社会風俗に反する態度、方法で取り扱うこと。性的にいやらしく、みだらなこと。」と書か れている。 しかしながら、このようなものは世の中にはいくらでもあるわけで、勿論、そのすべてが規制の対象になるわけ ではありません。 アメリカのあるメディア訴訟専門の弁護士に聞いたところでは、アメリカでは最初は猥褻な表現が禁止される べきだという考え方はなかった、と言うことです。神に対する冒涜などの表現は最初から厳しく規制されて来た ようですが、表現規制の対象としての猥褻という考え方は割り合い最近のものだ、と言うことでした。 裁判の上では、1942年に「チャプリンスキー事件」判決(Chaplinsky v. New Hampshire, 315 U.S. 568) というのがあって、その中ではじめて、猥褻な表現は憲法上保護されない、という考え方が打ち出されました。 しかし、何が猥褻かという判断はそう簡単ではありません。その最初の判断基準は、1957年の「ロス事件」 判決(Roth v. United States, 354 U.S. 476)によって示されました。この中で、最高裁は、「内容の主要な テーマが全体として好色的な興味に訴えるものかどうか」を判断基準として示しています。 しかし、この基準は、1973年の「ミラー対カリフォルニア事件」の最高裁判決(Miller v. California, 423 U.S. 15) で精緻化されました。 この判決の中で、最高裁は、3項目から成る猥褻に関する判断基準を示しました。 @全体として好色的な興味に訴えている A明白に不快な方法で性的行為を描いている B全体として芸術性などのまじめな価値を欠いている という3項目で、「ミラー基準」と呼ばれています。これが現在までも受け継がれている、猥褻に関する判断 基準です。 |
|
2 児童ポルノ 一方、児童ポルノは表現の自由の保障の対象外である、という判断は、1982年の「ニューヨーク対ファー バー事件」についての最高裁判決(New York v. Ferber, 458 U.S. 747)ではじめて示されました。 これは、16歳未満の児童による性的行為を描いた制作物の販売を禁止しているニューヨーク州法が合憲かどう かを争う裁判でしたが、結論的に言うと、そのような児童ポルノは修正第1条によって保護されない、という判 断が示されました。 この判決は、児童福祉の観点から児童を性的な搾取から保護するということが目的なのであって、内容的に猥褻 であってもなくても、実際に児童を実際に使った作品は保護されない、とするものです。 |
|
3 1996年ヴァーチャル児童ポルノ禁止法 さて、今回問題になった「児童ポルノ禁止法」CPPAですが、この法律では、児童ポルノについてファーバー 判決で確立された定義を引き継いだ上で、さらに三つの規制が付け加えられています(Sec. 2256?)。 すなわち、 @ヴァーチャルポルノ規制("appears to be"規制) Amorphing規制 Bpanderingについての規制("conveys the impression"規制) の三つです。 第1のヴァーチャルポルノ規制というのが一番問題なんですが、条文としては、「性的にあからさまな行為をし ている未成年者を描いたもの、あるいはそう見えるもの」という表現をしていますが、要するに、実際に未成年者 を使っていなくても、出演者が未成年者であるように見えるだけで禁止の対象になる、ということです。 実は、このような事件の最高裁判決があるということについては、昨年4月に「CS成人番組倫理委員会」の方々 と一緒にチャツワースにある「表現の自由連盟」の本部を訪れた際、そこで初めて聞いて、以来その経過に注目し ていました。 ここで話題になったことですが、日本人は外国では非常に若く見られるので、成人であっても未成年に見られる 場合が多い。 そういう若く見られる日本人女性がポルノ作品に出た場合、成人であっても未成年と判断されて規制の対象になる 可能性がある。 それがこの法律です。 このような法律が出来た理由は、児童ポルノは、それがたとえヴァーチャルなものであっても、 @小児性愛者に小児を誘う手段として悪用される恐れがあること A小児性愛者を刺激することで、児童ポルノの制作・販売を促進し、児童に対する性的搾取の増加につながる恐れ があること Bコンピュータ映像の技術が発達し、ヴァーチャルなものか実際に児童を使用したものかの判断が難しくなってい るため、実際に児童を使用したポルノの所有者がヴァーチャルなものだと主張して訴追を免れることのないよう、 禁止の対象を拡大する必要があることなどだったようです。 これに対して、 ・「表現の自由連盟」 ・ヌーディスト生活雑誌の出版社 ・ヌード画家 ・ヌード写真家 の4者が、この法律は、過度に広範で曖昧であり、憲法によって保障された表現の自由を侵害する、と主張して、 法律の施行と同時に訴えを起こしました。 ま、要するに、こんな法律がまかり通ったら商売にならない、という訳です。 2番目の規制条項であるmorphing規制ですが、モーフィングというのは、「加工する」というような意味で、若 い成人俳優を使って、性的にあからさまな行為をさせてそれを作品にする、その時に児童に見えるように加工する、 という行為が規制の対象となっています。 この2つ目の規制については業界も止むを得ないと考えたようで、今回の訴訟の対象には加えていません。 3番目の規制はpandering規制といわれているものですが、要するに、この映像の中には未成年者の性的にあから さまな行為が含まれているよということを宣伝して、あるいは、そのように見せかけて、売る行為を規制したもの です。 この3番目の規制についても1番目のヴァーチャル規制と同様に違憲であるということで、原告4者が訴えを起し ました。 この裁判で訴えられたことは、猥褻でもなくファーバー判決に言う児童ポルノでもない幅広い分野の表現を規制 することは、果たして憲法に違反しないのか、ということだったわけです。 |
|
4 下級審の判断 これに対して、第1審は、この法律が施行されても「ロメオとジュリエット」が違法な作品として扱われるよう なことは考えられない、として、原告の主張を退けました。 因みに、ジュリエットの年齢は13歳だそうです。 しかし、第2審では、CPPA違憲の判決が出され、原告が勝訴しました。 同じような控訴審は他に4件ありましたが、それらではいずれも合憲判決が出ています。 そこで、この裁判は最高裁で審理が行われることになったわけです。 |
|
U 最高裁判所の判決とその反応 1 最高裁判決 最高裁の判決は結果として6対3で原告が勝訴しました。最高裁がどのような論理に基づいて判断したか、その あらましは以下の通りです。 @原則的な考え方について 軽い処罰でさえ表現の自由に及ぼす萎縮効果は大きいが、CPPAの定める処罰はかなり重く (初犯でも最高15年の禁固、再犯だと最高30年)、表現の自由に与える影響は極めて大きい。 A猥褻との関係について CPPAは、ミラー基準とは無関係に規制対象を拡大している。 B児童ポルノとの関係について 政府は、CPPAは実際に児童を使った児童ポルノと区別がつかない作品を禁止しているのだ、 と主張する。しかし、ファーバー判決で 禁止された作品は、それ自体が児童に対する性的搾取(sexual abuse)の記録であるのに対して、 CPPAが禁止している作品は、犯罪の記録でもなければ、それによって犠牲者を作り出してい るわけでもない。 政府は、ヴァーチャルな作品が児童に対する性的搾取につながる、と主張するが、その因果関係 は明白ではない。 政府は、児童ポルノが価値ある表現であることはまれなので、因果関係は間接的でもよい、と主 張する。しかし、ファーバー判決は、児童ポルノの内容を問題にしているのではなく、その制作 方法自体を問題にしているのであり、また、児童ポルノそのものには価値がない、としているわ けでもない。 Cその他の政府の主張について 政府は、小児性愛者がヴァーチャルな児童ポルノを児童を誘うのに利用するかもしれない、と主 張する。しかし、それ自体が合法的な存在でありながら違法なことに利用されるものは無数にあ る。 児童を保護するために「成人の権利の内にある表現(speech within the rights of adults to hear)」すべて を完全に禁止することはできない。 政府は、ヴァーチャルな児童ポルノは小児性愛者を刺激し違法な行為に走らせる、と主張する。 しかし、表現を、それが持つ単なる傾向だけで禁止することは出来ないし、それによっていつか違法行為が行わ れるであろう可能性が高まる、というだけで禁止することもできない。 政府は、ヴァーチャルな児童ポルノの禁止は児童ポルノ市場をなくすためにも必要だ、と主張する。 しかし、ヴァーチャルな児童ポルノが流通すれば、却って違法な児童ポルノは姿を消すのではないか。 政府は、ヴァーチャルな児童ポルノが流通すれば、実際の児童ポルノの制作者を訴追することが困難になる、と 主張する。この主張に従えば、結局「憲法によって保護されない表現を禁止するために、憲法に保護される表 現を禁止する」ということになるが、そのようなばかげたことはない。 最高裁は、以上のように論じて、原告の主張を認め、CPPAの関係条文は違憲という判断を示しました。 2 判決に対する反応と意義 この判決に対する関係者の反応を御紹介しますと、 @FSC専務理事ウィリアム・ライオン表現の自由と成人向け産業にとって、ここ10年における最も 重要な勝利である。 AAVN(Adult Video News Magazine)編集長マーク・カーンズもっとも重要なことは、裁判所が若く 見える成人と実際の未成年との間に明確な線を引いた、ということである。 CPPAの規定に従えば児童ポルノに分類されてしまう過去の作品も、この判決によって回収しなく ても済むことになったので、ハリウッドにとっても大きな勝利である。 政府にとっても、本当の児童ポルノの追放に力を注ぐことができるようになったので、勝利である。 このように、業界団体は勿論皆この判決を歓迎しています。しかし、これに反対の団体もあって、例えば American Center for Law and Justiceは、この判決はインターネットポルノに道を開くものだ、と批判していま す。 また、ワシントン・ポストは、裁判所が、修正第1条の原則を技術的に新しい表現分野にまで拡大しようとしてい ることを示したもの、と述べています。 いずれにしても、この判決を読んで感じられることは、総じてアメリカの裁判所は日本から見るとやはり表現の 自由をできるだけ認める姿勢でいるようだ、ということです。 また、これは2000年5月の「プレイボーイ事件」判決 (United States v. Playboy Entertainment Group Inc., 529 U.S. 803)の時にも感じたことですが、成人に は成人向けの作品を見るという表現の自由に基づく権利がある、という考え方がはっきりしている、ということ です。 3 判決の影響 以上の判決の影響ですが、まず、連邦政府はこれに代わる新しい法律を制定しなければならなくなりました。 アシュクロフト司法長官は、記者会見で、「判決は残念だが、引き続いて児童ポルノ規制に関する法律の制定を 考えなければならない」と述べています。 また、全米19州で、同じ内容の州法を見直す動きが始まっています。 |
|
V 日本における猥褻・児童ポルノ規制 次に、日本ではどうなっているか、という点について触れておきたいと思います。 1 猥褻規制 (1)法規制 日本における猥褻規制は、法的には刑法第175条で、わいせつな文書、図画、その他の物を頒布し、販売し、 又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処する。 販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。 と定められています。 また、関税定率法の第21条第1項第4号では、「公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」 という表現で、猥褻物の輸入を禁止しています。 放送関係で言うと、電波法第108条で、「わいせつな通信を発信した者は、二年以下の懲役又は百万円以下 の罰金に処する。」、また、放送法第3条の2第1項第1号においては「公安及び善良な風俗を害しないこと」 という形で猥褻物を排除しています。 (2)判例 チャタレー事件判決 日本の最高裁がはじめて猥褻の定義を示したのは、1957年の「チャタレー事件」判決(刑集11巻3号10 04頁)においてで、猥褻と判断するには以下の3点の要素が必要だとされました。 すなわち、 @いたずらに性欲を興奮させ刺激する A普通人の正常な性的羞恥心を害する B善良な性的道義観念に反する の3点です。 判決は、同時に、「芸術性と猥褻性とは別異の次元に属する概念であり、両立し得ないものではない」と述べ て、例えば、芸術性に優れた作品であったとしても猥褻と認められる部分があれば排除すべきだ、とする立ち場 をとっています。 この考え方は、絶対的猥褻概念と言われています。 これに対して、アメリカのミラー判決においては、作品全体に芸術性が認められるかどうかが非常に重要な要素 となっており、たとえ部分的に非常に性的にあからさまな表現が含まれていたとしても、全体的に価値があると 認められていればそれは猥褻物ではない、とされています。 これは相対的猥褻概念と言うことができるでしょう。 「四畳半襖の下張り」事件判決 1980年の「「四畳半襖の下張り」事件」最高裁判決(刑集34巻6号433頁)では、「チャタレー事件」 判決における猥褻性判断基準を精緻化し、以下のような諸点を考慮した上で、「その時代の社会通念に照らして」、 「チャタレー事件」判決における3要素を満たしているかどうかを判断すべきだ、としています。 ・性に関する露骨で詳細な描写・叙述の程度とその手法 ・その描写・叙述が文書全体に占める比重 ・文書に表現された思想等とその描写・叙述との関連性 ・文書の構成や展開 ・芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度 ・主として読者の好色的興味に訴えるものと認められるか こういう猥褻概念についての考え方を見ると、先程の相対的猥褻概念に近づいているように考えられます。 (3)アメリカによる影響 参考までに、アメリカの判例と日本の判例を時系列的に並べた簡単な表を資料として付けておきました(表) が、この表を見てお分かりの通り、日本の最高裁ではじめて猥褻判断の基準が示された1957年に、アメリカ においても、はじめての猥褻判断の基準を示した「ロス事件」判決が出ています。 その点で、この1957年という年は猥褻についての概念を考える上で重要な年だと言えるかも知れません。 「チャタレー事件」判決は3月に出され、「ロス事件」判決は6月に出されているので、「チャタレー事件」 判決が「ロス事件」判決の影響を受けていないことは明らかだと思います。 しかしながら、これに続く1980年の「「四畳半襖の下張り」事件」判決は、1973年の「ミラー事件」 判決の3年後に出されているので、相当「ミラー事件」判決の影響があったのではないか、と考えています。 アメリカは、訴訟大国で、メディアの世界においても次から次へと訴訟が起こされていますが、日本では余り そのようなことはありません。 しかしながら、アメリカでは、このように訴訟事件が頻繁に起きることによって、法律理論も次第に深まって行く。 その結果を日本も研究者であれ裁判所であれ学ぶことによって日本の裁判におけるも法理も深まって行く、とい う関係が存在するのではないかと考えています。 2 児童ポルノ規制 児童ポルノ規制については、「児童買春・児童ポルノ処罰法」という法律が議員立法によって成立し1999 年に施行されました。 また、「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」というもの に日本も今年5月に署名しています。 上に述べた児童ポルノ処罰法は1999年11月に施行されましたが、3年経ったら再検討するということに なっています。間もなく11月なので、その見直し作業が始まる所です。 そこで問題になるのは、 @絵を含めるのか、つまり、日本でもヴァーチャルなものも規制の対象にするのか、ということと、 A単純所有、つまり、販売を目的としない個人的な所有も規制するのか、と言うことです。 児童ポルノ処罰法の規定を見ると、定義を述べている第2条第3項で、「児童を相手方とする又は児童による 性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することが出来る方法により描写したもの」と書い てありますが、ここで問題としているのは実際に児童を使った作品ということで、ヴァーチャルなものは規制 の対象にはなっていません。 ところが、「選択議定書」の第2条の(C)項では、「児童ポルノ」とは、「現実の若しくは擬似のあからさ まな性的な振舞いを行う児童のあらゆる表現(手段のいかんを問わない)又は主として性的な目的のための児童 の身体の性的な部位のあらゆる表現をいう。」(外務省による仮訳)と述べていて、ここではヴァーチャルな ものも含むとしている。 勿論、この「選択議定書」については、正確にその規制に従わなくてはならないことにはなっていませんが、 日本としてはどうするのか決める必要があります。 それから、欧州評議会の「サイバー犯罪条約」第9条というのがあって、ここにchild pornographyの定義が示 されていますが、"a person appearing to be a minor engaged in sexually explicit conduct"という表記が あり、明らかに、CPPAが禁止対象にしたヴァーチャルな児童ポルノを定義に含めています。 児童ポルノについては、関係機関は政党・省庁・日弁連等沢山あるようですが、主務官庁というのはない、と いうことです。だからこそ、議員立法が必要だったということなのだろうと思います。 自民党の「児童売買春等対策特別委員会」が再検討作業に入っているということだったので、電話で話しを聞 きました。 委員長は谷垣議員でしたが今度の内閣改造で入閣したため、委員長は空席の状況になっています。 副委員長は野田聖子議員とだということです。 いずれにせよ、委員の改選が必要になっています。 少年というだけで13省庁が関係するということで、再検討も大変な作業になるようです。 それから、日弁連には、「子どもの権利委員会」という委員会があって、その中に「児童買春・児童ポルノ禁 止法「見直し」問題検討チーム」というのが今年5月に出来て、この問題についての再検討作業をしているとい うことです。 この委員会は、坪井節子さんという女性弁護士が座長をつとめています。 で、坪井さんにどう対応する考えか聞いて見ましたが、この問題について、日弁連は、「処罰法」が制定される 1998年の段階で、絵を含めることには反対だという意見書を出しているそうです。 今度の見直しに当たっても、日弁連は基本的にはそのようなスタンスで行きたいとのことでした。 しかし、坪井さんによると、問題は他にも色々ある。 一つは児童ポルノで利用される少年は、非行少年ではなく、被害者である、ということです。 未成年者を性的搾取から守るというのが法律の主な目的の一つです。 しかしながら、被害者の保護や社会復帰を制度上保障すべきところ、実際上は被害者が非行少年扱いされている、 ということを指摘しておられました。 それから、啓発活動が足りないということも問題だ、と言っておられました。 また、日本は児童ポルノの輸出大国と言われているようです。 この問題では、国際司法共助が必要になって来ますが、それについても余り具体化していない、ということでした。 それから、「日本ビデオ倫理協会」にも先日伺ってお話しを聞いて来ました。 ビデ倫としては、1988年に宮崎努事件があった時に児童ポルノを、ホラーと共に、全面禁止にしたそうです。 それから、昨年5月に定款を改正した時に、こうした内容のアニメも禁止した、ということです。 もし、見直し作業の結果、ヴァーチャルな児童ポルノは規制対象にはしないということが確認されたらどうするか、 ときいてみたところ、それでも定款を変えて元に戻すことはしないということでした。ビデ倫としては児童ポルノ に対して厳しい態度で臨んでいるようです。(了) 参考文献 ・海部一男「未成年者保護のための成人向け番組規制と表現の自由 米最高裁、CATVでの規制に違憲判決?」、『放送研究と調査』 2000年10月号 ・海部一男「プレイボーイ訴訟事件米最高裁判決の意義とその背景 訴訟当事者インタビューから?」、『メディア情報調査リポート』 2001年2月号 |
|